巫女のMさん(後編)
【オカルト】【カミカゼエース先輩シリーズ】巫女のMさん(中編4)の続きです。
「ふあー。良く寝た。って、あれ? ここウチじゃないじゃん。そっか、飲みに来てたんだっけ?」
「あ、やっと起きてくれましたね。さっきはすみません。自分が店員さんに注文し間違えたせいで、ウーロン茶じゃなく、ウーロンハイをMさんに渡してしまったようです。すみませんでした」
「はっ? アタシはさっきお酒飲めないっつっただろ? なに人の話きーてんだよ?」
「ほんとにすみません」
「まぁ、いいや。これで貸し1コな。なんかで埋め合わせしてもらうから。何がいいかなぁ? そういやちょうど今欲しいアクセあったんだよなぁ」
「ちょっとM。調子に乗るのもいい加減にしなさいよ! Bさん。Mの言う事を真に受けなくていいですからね」
「でも、ほんとに何かで埋め合わせはさせてもらいますから」
「さすがB。話が分かるねぇ。さっきのオカルトスポットに連れて行くっていう話といい、今といい気が利くいいヤツじゃん?」
「M! ほんとにいい加減にしなさいよ!」
そんなやり取りをしつつ、Mさんと初顔合わせとなった飲み会はお開きとなった。
そしてKさんとMさんが帰宅するためにタクシーを拾おうと大通りまで出たときだった。
「ちょっと、そこの君」
ふいに警察官の方がMさんに声をかけてきた。
なんだ? Mさんの見た目で判断して、こんな時間に歓楽街にいるというので職質してきたのか?
「あー、やっぱりさっきの方だね。お婆さんはあの後、すぐに病院で手当してもらって大事には至らなかったようだよ。それとお婆さんを怪我させた相手は今、署の方で傷害の現行犯の容疑で取り調べしてる。さっきは本当によくやってくれたね」
ん? 何の事だ? 全然話が読めないんだが。
そこでKさんが、Mさんに問いかけた。
「ちょっとM。さっき、っていつの話? 何があったの?」
「あ? ちぃーとばかり人助けっつーか、そんな大したことやってねーよ」
「この方のお知り合いの方々ですか? 実は3時間ほど前の事なんですが、この方が相手と口論しているところにちょうど本官が通りがかりまして、それで事情を聞くと、お婆さんを突き飛ばしてそのまま立ち去ろうとした相手を、この方が引き止めて口論になったそうなんです」
「だって、アタシの目の前でソイツ、ゆっくり歩いていた婆ちゃんを邪魔だとばかりに突き飛ばしたんよ。婆ちゃんそのまま地面にころんじゃって、なんか足を怪我したみたいで立ち上がれないようだった。ソイツは見た目ヤクザっぽいヤツだったから、周りにいた他のヤツら見て見ぬ振りしやがっててさ。そのままソイツが知らんぷりして立ち去ろうとしたから、アタシがとっ捕まえて『謝れ!』って怒鳴ってやったんよ」
「じゃ、待ち合わせの時間に遅れてきたのって、そのせいだったの?」
「だからヤボ用だって言ったじゃん。大したことやってねーんだから気にすんな」
Mさんすげー! 普通ヤクザ相手にケンカなんてふっかけられないよ。
それに加え人助けまでしたというのに、それを遅れた理由として言わず『ヤボ用』の一言で済まそうとするとは、なんて謙虚なんだろう。
その後、警察官の方はMさんに改めてお礼を言い、その場を後にした。
そしてタクシーを拾い、KさんとMさんが帰宅するのを、自分とS先輩で見送った。
「しかし、Mさんは見かけによらず立派な人だったな。人は見た目で判断しちゃいけないってことの典型だな」
「本当にそうですね。Kさんからの話といい、さっきの事といい、自分はMさんの事をすっかり尊敬しちゃいましたよ。あっ、そうだ! ウーロンハイの件の埋め合わせも兼ねて、今度Mさん達と自分達の4人でどこかに遊びに行きませんか? Mさんの厳しい修行の気晴らしにもなってくれると思いますし」
「そりゃいいかもしれんな。じゃ、どこに行くかを考えるのはBに頼んでいいか?」
「はい。わかりました。考えておきます」
その後、自分はS先輩と別れた。
そして帰宅途中、どこに遊びに行こうか考えていた。
そうだな。ちょうど時期もいいし、アウトドアでバーベキューなんていいんじゃないだろうか?
Mさん喜んでくれるといいな。
……でも、やっぱりアクセサリーの方が良かったりして……。
「巫女のMさん」編 終わり