津波でボロボロになってしまった車のおもちゃ
先日、自宅の物置を片付けている時に、ふと目に留まったものがあった。それは自分にとってとても懐かしく、とても思い入れのあるものだった。
今回は、そのことについて語ろうと思う。
ここからは、つい2年前、東日本大震災の津波で自宅と実家が被災して、その後片付けをしていた時の話だ。
自宅の片付けはなんとか終わり、被害がもっと酷かった実家の片付けを手伝いに、実家へ向かった。
実家では、津波で流されてきた瓦礫が家の中に流れ込んできたせいで、1階部分はめちゃくちゃな状態になっていた。
それらの瓦礫を1個1個取り除きつつ納戸の片付けをしている時に、奥からそれが出てきた。
それは自分が小さいころに親から買ってもらった車のおもちゃだった。
しかし、それは津波による泥でひどく汚れていた。
そんな昔に買ってもらったものがまだ残っていたことに驚いたが、よりによってこんな無惨な姿で再会することになろうとは。
これを買ってもらった当時はものすごく嬉しくて、寝るときも枕元において大事にしていた車のおもちゃ。
しかし、いつしか飽きてしまって遊ばなくなり、それ以来どこに行ったのかもわからなかったおもちゃが今ここにある。
だが、そのおもちゃとひさしぶりの再会を果たしたというのに、その姿は見るも無残な姿に変わり果ててしまっていた。
本来なら懐かしさがこみ上げてくるはずのおもちゃがそんな状態になってしまったのを見て、自分の小さい頃の思い出も津波に汚されてしまったように感じ、思わず涙がこぼれてしまった。
そしてこの時ほど津波に対して、悔しさや怒りを感じたことはなかった。
今すぐにでもきれいにしてあげたかったのだが、この時はまだ水道が復旧しておらず諦めるしかなかった。
そして後日、水道が復旧した際すぐに汚れを落としてあげたのだが、いかんせん海水に浸かってしまったせいで金属部分は錆びてボロボロになってしまい、タイヤなどの可動部分は全然動かなくなってしまった。
そんな状態になっても自分の思い出が詰まったおもちゃを捨てることなどできず、自宅に持ち帰って物置にしまっておいたのだが、それがつい先日、物置を片付けていたらひょっこり出てきたのだった。
#正直なところ、物置にしまっておいたのをちょっと忘れかけてた・・・(汗
ひさしぶりにこのおもちゃを見つけて、上記で述べた悔しさや怒りを改めて思い出して懐かしく感じたとともに、
あれほどまでに悔しかった気持ちが、今やそれもいい思い出なりつつある事実に
「どんなに悔しいことや辛いことがあったとしても、いずれは時が解決してくれるということなんだな」
と改めて思い、感慨を覚えずにはいられなかった。
人は時に、とてつもなく辛いことに直面する時がある。
その時は、確かに辛いかもしれないが、いつかはきっと転機が来ると信じて何事も前向きに進んでいくこと。
そして、その気持ちをしっかり持つことが大事なんだと、このおもちゃから教わった気がした。
自分の小さいころの思い出がいっぱい詰まった車のおもちゃ。
もう遊ぶことはできないが、これからもずっと大事にとっておくつもりだ。
それが、今までずっとほったらかしにしてしまった故に、津波被害を受けてボロボロにさせてしまったおもちゃに対する、ほんの少しでも罪滅ぼしになると思うから。