戦時中の化学兵器実験施設(後編)
【オカルト】【カミカゼエース先輩シリーズ】戦時中の化学兵器実験施設(中編2)の続きです。
「あ、あと、もう一つ、これはさっきのことなんですが……」
「さっきのこと?」
「あ、あの。なんて言ったらいいんだろう……。あれで私が正気に戻れたんで、一応お礼は言うべき? なんでしょうか……」
「どうしたんですか?」
「え!? 覚えていないんですか! あんなことしておいて!」
「あんな、って? え! あ……アレですね……」
「そ、そうです。アレです。これって、お礼を言ったり、謝ったりするには、何か触られ損のような気がするし、かと言ってアレで私が正気に戻れたわけで、怒るわけにもいかないし……。非常に対応に困っているんですが……」
「ま、まぁ、ここはお互いさまということで、何もなかった、ということで良く……ないですか??」
「うーん。そうですね。不可抗力だったということで、そういうことにしておきます。でも本当に忘れてくださいね。少しでも下心を持ったらすぐわかりますからね。それだけは覚悟しておいてくださいね」
こりゃ、やばいな。男の性として、意識するなって方が無理なんだが……。
「ちょっと!! 言ってるそばから、さっそく変なこと考えましたね!」
「いやいや、そんなことないですってば。そ、それよりそうだ! S先輩はどうなったんですか? 大丈夫だったんですか?」
「えっ!? あ! はい。Sさんは先ほど意識を取り戻しましたので大丈夫です。幸いけがもなかったようですし。ただ、まだ軽い脳震盪を起こしているようで、あちらで横になってもらってましたが、そろそろ大丈夫なんじゃないでしょうか。ちょっと見てきますね」
うはぁ、こりゃ、もしKさんに彼氏ができたら、その人やばいんじゃないの?
つか、普通の男子だったら近づくことすら出来ないかもな。そんな聖人君子みたいな奴いないだろ?
「お、おぅ、お前は大丈夫だったか?」
「あ、はい。なんとか大丈夫でした。S先輩も大丈夫ですか?」
「あぁ、なんとかな。しかし、あの後どうやって、あんな状態になったKをなだめたんだ?」
そこでKさんをちらっと見てみたら……。う、うわー、Kさんめっちゃこっち睨んでるよ。余計なこと言うなってことだろうな。
「え! いや、それは自分も途中から気絶してたんでよくわからないんですけど、いつの間にかKさんが普通にもどってました!」
「そうか、それならいいや。とにかくもう帰るぞ」
S先輩の車に戻る途中、こっそりKさんに聞いてみた。
「ところでKさん。あの”へその緒”どうするんですか?」
「このままほったらかしにすると、また悪さするかもしれないので、お婆ちゃんに頼んで供養してもらいます」
「え、お婆ちゃんって? さっきも『お婆ちゃんから護身用のペンダントをもらった』と言ってたけど、そういった霊の供養もできるの? Kさんのお婆さんって何か特殊な能力持ってるんだ?」
「はい。実は私の実家はそこそこ大きめの神社の管理をしてて、お婆ちゃんはそこの宮司をやっているんです。そして代々、私の女系家族は霊感が強くて、だから私も同じように霊感が強いんですが、その中でもお婆ちゃんは別格なんですね。よほど強い霊でない限り、あっさり浄霊できるくらいの力を持っているので、こういった供養はなんてことはないです。ただ同じ女系家族でも私の妹だけはお父さんに似たのか、まったく霊感がないんですよね。その妹は今実家で巫女やってますけども」
「えっ、それじゃ、もしかしてKさんも巫女さんの格好したりするんですか?」
「あ、たまに正月とか忙しい時はお手伝いでやったりもしますね」
ちょ、ショートボブ+メガネっ娘+巫女タン、これ最強!
この組み合わせ、やばすぎですよ。めっちゃ萌えるんですけど。
「……Bさん、また変なこと考えてますよね? 下心はすぐわかるんですからね。いい加減にしてくださいよ」
「あ、はい。大変すみませんでした……」
「んっ、2人ともどうかしたか?」
「いえいえ、なんでもありませんってば! そんなことより、とっととこんなところから帰りましょう!」
そんなこんなで、今回もなんとか生きて帰ってくることができた(笑)
つか、笑い事じゃないな。下手すりゃマジやばかったからな。
唯一の頼みの綱であるKさんが、まさかとり憑かれてしまうような自体になろうとは夢にも思ってなかったからな。
もうほんとにこりごりなんですけど。
でもS先輩のことだから、またオカルトスポットを見つけてきて、自分を連れ回すんだろうな……。
ここからは後日談で、S先輩から聞いた話だ。
Kさんがお婆さんに供養の相談をしに行ったら、お婆さんがKさんを見るなり開口一番『どこに行って何やらかしてきたんじゃ!?』とめっちゃ問い詰められたらしい。
それで、経緯を話して、これまたこっぴどく叱られたという。
下手すれば自分の命が危うかったこと、安易な気持ちでそういった思念に心を許すようなことはするな、ということなど、それはもう散々叱られたとのこと。
だが、へその緒の供養の件は快く引き受けてくれ、そしてこれも今後のいい教訓になっただろうということで、今回だけは大目に見てくれたらしい。
ただし、お婆さんの許可が下りるまで、Kさんがオカルトスポットに行くのは禁止されてしまった。
Kさんにまでここまで迷惑かけたんだから、いい加減S先輩も懲りて欲しいんだが……。
しかし、案の定これだけでは終わらず、こういった話はまだまだ続くのであった。