巫女のMさん(中編3)
【オカルト】【カミカゼエース先輩シリーズ】巫女のMさん(中編2)の続きです。
「で、さっきの話の続きなんだけどさ、今度いつ行くんよ?」
「あ、いや、今後はKさんのお婆さんから依頼がないとオカルトスポットには行けないから……。ところでKさん。お婆さんからの依頼って何か聞いてますか?」
「はい。それなんですが、一応候補は言われています。それでその候補というのが、どうやらオカルトスポット絡みらしいんです。最初にお婆ちゃんから聞かされていた話だと、私がオカルトスポットに行くようなことは、ほとんどないということだったんですが……。本当に私で大丈夫なのかな?」
「まぁ、お婆さんが依頼するところだから大丈夫だと思いますよ。ところで、それはどこなんですか?」
「1年ほど前に○○ダムの工事現場で死亡事故が起きたのを覚えていますか? それ以来、そこの工事がストップしているんですが、その原因がどうやら霊絡みらしいんです。それでつい最近、お婆ちゃんのところにその工事業者の方が来て『なんとかしてもらえないか?』という依頼があったそうなんです」
あぁ、その事故なら覚えている。でも工事がストップしていることは知っていたが、それが霊絡みだったということまでは知らなかったな。もっとも霊絡みだなんてことが公になったら、何かと業者の人も困るだろうから今まで隠していたんだろうとは思うが。
でも、やはりどうしようもなくなって、今頃になってお婆さんのところに相談しに来た、ってとこか?
「だがオレ、実はこの前のスピード違反の出頭通知がまだ来てなくてな。そんな時期だからほとぼりが冷めるまで車の運転はなるべく控えようと思ってて、Kを乗せてその現場まで連れて行くってのは、もうちょっと先になりそうなんだよ。だから、今はKのお婆さんには依頼を待ってもらっている。スピード違反の件がケリついたら、改めてお婆さんに会って正式に依頼を受けるつもりだ」
「えっ? そんな悠長なこと言ってていいんですか? 業者の人だって今すぐ解決して欲しいんじゃないですか? 何だったら自分が車出しますけど?」
「いや、実はそのことはオレも言ったんだよ。でもそれでもいいらしい。これはオレの想像なんだが、お婆さんが解決を急がないのも何か考えがあってのことなんじゃないのか?」
自分達がそんなことを話していると、ついさっきまで普通だったはずのMさんが妙に静かになっていることに気づいた。そしてその後、突然テーブルに突っ伏した。
「どうしたの! M。大丈夫!?」
KさんがMさんの体を揺すりながら声を掛けたが返事がない。その後、Mさんの体を起こしてみると顔が真っ赤だ。まるで酔っ払っているように見えるが……。ウーロン茶飲んでたはずなのになんでだ?
「Kさん、もしかしてMさんにビール飲ませました?」
「えっ? いえ飲ませてませんよ。それなのに、まさか酔っぱらうなんて? あっ! もしかして!」
そう言い、Mさんが飲んでたグラスに口をつけた。
「やっぱり! これウーロンハイじゃない! ちょっとM、大丈夫?」
「えっ! 店員さんがウーロン茶と間違えたのか? あちゃー。自分の注文の仕方がまずかったのかも……」
「どうしよう。Mはとてもお酒に弱いから……。とにかく横にさせなきゃ。私の膝の上に頭乗せて、と。これならちょっとはましかな」
あ、Kさんの膝枕うらやm、いやいや、なんでもないっす。何、Mさんに嫉妬してんだ自分?
その時、Mさんが何かしゃべった。
「うーん。いつも姉ちゃんばっかりずるいよぉ。いつもアタシのこと置いてきぼりにするんだもん……」
んっ? Mさんが寝言言ってる?
「なんでアタシばっかり除け者なんだよぉ。みんなずるいよぉ……」
除け者? ずるい? いったい何のことだ?
巫女のMさん(中編4)に続きます。