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たまには部屋をかたづけようよ

部屋を片付けせなあかんと思いつついつも放置プレイ。そんな自分の日々の想いをつづった日記系ブログですよ?

最近書いた記事

戦時中の化学兵器実験施設(中編1)


オカルト】【カミカゼエース先輩シリーズ戦時中の化学兵器実験施設(前編)の続きです。


「おい、K。なんか霊みたいな気配を感じるか?」

「いえ、今のところは特に感じませんね」

「とにかく中に入ってみるか。B、入れそうなところ探すから手伝え」

 そうして2人で建物の中に入れそうなところを探し始めたのだが、放置されていたという割には建物はしっかりしており、玄関はあったが鍵がかかっているようで開かず、窓は何か踏み台になるようなものがないと手が届かないような高さにあったため、諦めざるを得なかった。
 どうしたものかと考えていた時、Kさんが何かに気づいたようで玄関に近づいていった。

「あれ? この玄関開きますよ」

「何? さっき確かに開かなかったよな? なんで開くんだ?」

「たぶん開け方が悪かったんじゃないですか? 私が開けようとしたら、あっさり開きましたよ」

「まぁ、いいや。じゃB、おまえ先入れ」

「ちょ、なんで自分が先なんですか? S先輩こそこういう場所に来るのは手馴れてるんじゃないですか? 先にお願いしますよ」

「んー。なんか聞こえたようだが、気のせいかぁ? と に か く おまえが先に入れ」

「あー、はいはい。入りますよ。もうまったく人を連れまわしておいて自分勝手なんだから」

 そして建物の中に入ってみて、ちょっと驚いた。
 普通こういった廃屋というと、床にはモノが散乱していてとにかく汚いものを想像すると思う。
 しかし、ここはほんとに長年放置されていたのか? と思うくらい床には何も落ちていなく、壁沿いに棚はあったが、そこにも何も置かれてはなかった。
 つまり、それだけモノというモノが何もないようなところだった。
 もしかして、定期的に誰かが訪れて掃除とかのメンテをしていたということなのだろうか? もっとも場所的に普通じゃ来られないようなところだから、荒らされたりしてなかっただけかもしれないけどな。
 それはともかく2人を中に呼ぶことにした。

「中は大丈夫そうです。入ってきてもいいですよ」

「おー、そうか。ご苦労」

 と、外からS先輩の声が聞こえ、まずS先輩が、続いてKさんが中に入ってきた。

「ありゃ、何もねーな」

「え? 何もないですか? ちゃんといろんなもの揃ってますよね。テーブルとかソファとか」

「は? テーブル? ソファ? そんなのどこにあるんだよ?」

 あれ? なんかKさん変だな。何が見えているというんだ?

「あ! あっちの部屋から、誰か私を呼んでるような声がする」

 Kさんが急にそう言い出して、隣の部屋に向かって走り出した。

「ちょっと待て! 1人で勝手に行動するな。何があるかわからんだろうが!」

 S先輩がKさんに向かって叫んだが、Kさんは構わず隣の部屋に行ってしまった。そのため自分達も急いで隣の部屋に行ってみると、Kさんは部屋の片隅に座り込んで何かを眺めていた。

「おい、Kどうしたんだよ?」

「私を呼んでいたのはこれだったんだ」

 Kさんはそう言い、おもむろに今まで眺めていたものを手に取ったように見えた。しかし、自分達にはKさんが何を手に取ったのかわからなかった。

「ん、Kよ。今何を拾ったんだ?」

「え、クマのぬいぐるみですよ。これです」

 そう言って見せてくれたのだが、手には何も持っていないように見える。

「は? クマのぬいぐるみ? お前何も持ってないだろ?」

「え、ちゃんと持ってますよ。わからないんですか? これですよ」

 と言って自分達の目の前に手を差し出すのだが、やはり何も持ってない。

「おまえ大丈夫か? なんかやばいものにとり憑かれてないか!?」

 とその時、突然Kさんが泣き出した。

「どうしたんですか! Kさん」

「あ、いえ。なんか急に涙が……。このぬいぐるみに込められた思念が直接私の感情に訴えかけてきたもので……」

 あいかわらずクマのぬいぐるみは自分達には見えないが、Kさんがその思念とやらを語ってくれた。


 このぬいぐるみは、ある少女がその母親からもらった手作りのクマのぬいぐるみだった。
 その母親は少女が物心がついたころに病気で亡くなっており、それ以来ずっと少女はそのぬいぐるみを母親だと思って、大事な宝物としていつも肌身離さず持ち歩いていたという。
 その少女はこの施設で働いていた方の娘さんだったようで、その父親に連れられて、ここにはちょくちょく来ていた。
 そして父親が仕事場であるこの施設に自分の娘を連れてきていたのにも理由があった。
 その娘さんも若くして母親と同じ病を抱えていて、実は父親は自分の娘の余命が長くないことを知っており、なるべく一緒にいてあげようとしたためだった。
 施設の他の職員もそれを知っていたが故に、その娘さんをとてもかわいがっていたようだ。
 そんなある日、その娘さんが施設内で急に倒れた。それまで安定したはずの容態が急変したらしい。
 娘さんは、みんなに親切にしてもらっていたこの施設が大好きだったので、またきっとここに戻ってこれることを信じて、大事にしていたクマのぬいぐるみを自分の代わりとして置いていくことにした。
 しかし、その願いも適わず二度と戻ってくることはなかった。
 でもこのクマのぬいぐるみは、娘さんが自分を取りに戻ってきてくれることを信じて、今でも待っているという。


「どうしましょう? このままここにほったらかしじゃ、このクマちゃんがあまりにもかわいそうすぎて……」

「うーん。どうしましょうと言われても、オレ達には見えないもんだからどうしようもないな。やはり霊感が強いKと波長があったのか、それでKには見えてオレ達には見えないのかもしれないな」

 その時、隣の部屋から『バタン』という音が聞こえた。

「ん、なんだ? 今の音は」

「あっ! さっきの玄関が閉まってますよ!」

「なんで閉まるんだよ! 外に誰かいるのか!?」


 戦時中の化学兵器実験施設(中編2)に続きます。

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